突然の相続が発生したとき、「自分は法定相続人に該当するのか?」「兄弟や孫、内縁関係の場合はどうなるのか?」と悩む方は少なくありません。実際、全国で相続手続きが行われる件数は【年間30万件以上】にのぼり、手続きの現場では約60%の家庭で法定相続人の範囲や順位に関してトラブルや疑問が生じているとされています。
法定相続人の理解は、遺産分割や相続税控除額、手続きの円滑化にも直結する極めて重要なポイントです。特に、配偶者の権利や子ども・兄弟姉妹の順位、養子や代襲相続の有無、離婚後の子どもの扱いなど、知識が不十分なまま判断すると思わぬ損失や本来の権利を失うリスクも生じかねません。
「親族関係が複雑で範囲がわからない」「そもそも誰が相続できるの?」と感じている方でも安心してください。本記事は、民法や公的資料の根拠に基づき、法定相続人の定義・範囲・順位を具体例や早見表、イラスト付きでわかりやすく解説。最新の相続事情や実務の注意点まで、専門家の知見で丁寧に整理しています。
この先を読むことで、「いざ」という時に迷わず行動し、ご自身やご家族の権利を守るための知識と判断力を身につけることができます。まずは、知っておくべき「法定相続人」のすべてを基礎から確認していきましょう。
法定相続人とは何か―定義と基礎理解【わかりやすく解説】
法定相続人とは誰のことか―基本定義と概念
法定相続人とは、民法により遺産を相続することが認められている人を指します。これは遺言がない場合にも必ず該当する人が定められているため、非常に重要な概念です。主な該当者は以下の通りです。
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配偶者
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子
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直系尊属(父母・祖父母)
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兄弟姉妹
一般的に、配偶者は常に法定相続人となり、血縁関係に応じて順位が決まっています。実際の相続現場では「法定相続人とは誰のことか」という疑問や、「どこまでが対象なのか」といった不安が多くみられます。親族の範囲や実態をしっかり把握することが、安心した相続手続きのポイントとなります。
法定相続人とはどこまでの範囲を具体的に示す
法定相続人の範囲は、民法で明確に規定されています。具体的には配偶者と血族相続人に分かれます。
法定相続人の種類 | 主な例 |
---|---|
配偶者 | 妻、夫(内縁の配偶者は含まない) |
子 | 実子、養子、孫(代襲相続の場合) |
直系尊属 | 父母、祖父母 |
兄弟姉妹 | 本来の兄弟姉妹、兄弟姉妹亡き場合の甥姪 |
配偶者は必ず法定相続人となり、その他の順位は以下の流れで決まります。
- 子(子がいなければ孫やひ孫)
- 直系尊属(父母など)
- 兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっていれば甥姪)
家庭の事情や独身の場合にも、この順序に従い相続人が決まります。
法定相続人と相続人の違いを明確に区別
法定相続人は法律で定められている相続人であるのに対し、相続人という用語は一般的に「実際に遺産を受け取る人全体」を指します。法定相続人は「遺言がなければ自動的に権利が生じる人」、相続人は「遺言や事情により遺産を受け取るすべての人」となります。
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法定相続人:法律で決められた範囲の人
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相続人:遺言や死因贈与なども含め、遺産を受け取る人すべて
例えば、被相続人が遺言で法定相続人以外の第三者に遺産を残す場合も、その第三者は「相続人」と呼ばれますが、「法定相続人」ではありません。両者を混同しないよう注意しましょう。
法的根拠と相続制度の成り立ち【民法の位置づけ】
法定相続人が相続で重要視される理由
法定相続人の概念は、民法で明確に条文化されていて、遺産分割や相続税の計算など全ての相続手続きの基礎となります。
相続制度では公正で円滑な遺産承継を目的とし、関係者の間でトラブルが生じないように法律によって基準が示されています。特に「法定相続人かどうか」によって、相続分の割合や税額、相続放棄の際の影響などが変わってくるため、非常に重要な役割を果たします。
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相続税計算の基礎控除額や税率の算定
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遺産分割協議での話し合いメンバーの確定
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相続放棄や代襲相続など、複雑なケースへの明確なルール適用
法定相続人を正しく把握することで、スムーズで安心できる相続手続きが進められます。各家庭の事情や個別ケースにも対応できる制度設計となっていますので、迷うことがあれば専門家への相談もおすすめです。
法定相続人の範囲と順位【図解・ケース別詳細解説】
配偶者の法定相続権の特異性と優先順位
配偶者は故人のパートナーであり、民法上、常に法定相続人となります。他の法定相続人(子や親、兄弟姉妹)がいるかどうかに関わらず配偶者の地位は変わりません。相続の順位は、血族に対しては子、直系尊属(親・祖父母)、兄弟姉妹の順で決まりますが、配偶者は常に並列で加わります。
下記のテーブルに、配偶者と他の相続人の順位関係をまとめます。
順位 | 法定相続人の組み合わせ |
---|---|
第1順位 | 配偶者+子(または孫) |
第2順位 | 配偶者+直系尊属(親・祖父母) |
第3順位 | 配偶者+兄弟姉妹(甥姪に代襲される場合あり) |
この特異性により、配偶者はいかなる場合も必ず法定相続人となります。
子・孫(代襲相続人)と法定相続人の範囲
血族のうち第一順位となるのが故人の子です。子がすでに死亡している場合は、孫が代襲相続人として法定相続人となります。
戸籍上の子は実子だけでなく養子も含まれ、さらに認知した子も対象です。
生存している子が一人でもいれば、親や兄弟姉妹は相続人にはなりません。孫は通常は相続人ではありませんが、子が先に亡くなっている場合は孫が相続します。
法定相続人とは孫も含まれるのかを具体例で整理
孫が法定相続人となるのは、子(被相続人の直系卑属)が相続開始前に死亡している場合です。いわゆる「代襲相続」が発生した場合に該当します。
ケース | 法定相続人 |
---|---|
子が存命 | 配偶者・子 |
子が死亡、孫が存命 | 配偶者・孫(孫が子に代わって相続) |
子も孫も死亡、ひ孫が存命 | 配偶者・ひ孫(ひ孫が代襲相続で相続人となる) |
このケースに該当しない場合、孫は法定相続人とはなりません。
直系尊属(父母・祖父母)や兄弟姉妹の相続権
子がいない場合、直系尊属(父母・祖父母)が第2順位の法定相続人となります。両親が存命なら両方が相続人です。親が亡くなっている場合は、さらにその上の祖父母が相続人となります。
また、子も直系尊属もいない場合は兄弟姉妹が法定相続人となります。その場合、配偶者がいれば配偶者と兄弟姉妹が相続します。
法定相続人兄弟や甥、いとこなどの法的扱い
兄弟姉妹が先に死亡していた場合、その子、つまり甥・姪が代襲相続人となります。いとこや遠縁は法定相続人となりません。
登場人物 | 法定相続人となる可能性 |
---|---|
兄弟姉妹 | 子・直系尊属がいなければ対象 |
甥・姪 | 兄弟姉妹が死亡時に代襲相続 |
いとこ | 法定相続人にはならない |
兄弟の相続についてはこのようなルールが適用されます。
養子・非嫡出子・独身・離婚後の子どもの法定相続人性
法定相続人には養子や認知された非嫡出子も含まれます。養子縁組が成立していれば戸籍上「子」と記載、実子と同等の権利を持ちます。非嫡出子の場合は、認知があることで相続権が認められます。
離婚や再婚など家庭環境の変化により、実子、再婚相手の子、前妻(前夫)の子、認知された子など、すべてが法定相続人となり得ます。独身の場合は、子・親・兄弟姉妹の順に相続権が移ります。
法定相続人とは独身のケースや離婚後の子供を具体解説
独身者が亡くなった場合、まず子供がいれば子供が法定相続人です。子供がいなければ親、その次に兄弟姉妹、兄弟姉妹が死亡していれば甥姪が相続人となります。
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独身・子供あり:子が法定相続人
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独身・子供なし、親あり:親が法定相続人
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独身・親も死亡、兄弟姉妹あり:兄弟姉妹が法定相続人
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離婚した元配偶者の子:血縁上の子であれば相続権あり
養子縁組や前妻の子も戸籍上の「子供」であれば、差別なく法定相続人となります。相続人の確認は戸籍謄本の取り寄せが有効です。
法定相続分と相続割合の仕組み【計算例・早見表付き】
法定相続分の基本ルールと人数による違い
相続が発生した場合、民法に定められたルールに基づいて財産を分けることになります。これが、法定相続分と呼ばれる仕組みです。法定相続分は遺言が存在しない場合や、相続人全員での協議が整わない場合に活用され、相続人の人数や続柄によって異なります。
主要な法定相続分のルールは以下の通りです。
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配偶者と子供がいる場合: 配偶者1/2、子供(複数なら等分)1/2
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配偶者と直系尊属(親): 配偶者2/3、親1/3
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配偶者と兄弟姉妹: 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
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子供のみ: 全員で等分
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親のみ: 全員で等分
これらのルールは、財産分割の基本指針となります。
配偶者有無・子・兄弟姉妹それぞれの割合比較
法定相続分において、配偶者の有無や他の相続人の構成によって、受け取れる割合が大きく変化します。以下の早見表で主要なパターンを比較しましょう。
相続人の組み合わせ | 配偶者の割合 | 子の割合 | 親の割合 | 兄弟姉妹の割合 |
---|---|---|---|---|
配偶者と子 | 1/2 | 1/2 | – | – |
配偶者と親(直系尊属) | 2/3 | – | 1/3 | – |
配偶者と兄弟姉妹 | 3/4 | – | – | 1/4 |
子供のみ | – | 1 | – | – |
配偶者のみ | 1 | – | – | – |
この表からもわかるように、配偶者は常に法定相続人となり、その割合も高く設定されています。
遺留分との違いと配偶者の特別扱い
遺留分は、相続人が最低限取得できる権利のことであり、法定相続分とは切り離された概念です。例えば、全財産を第三者に遺贈されても、一定の相続人には遺留分が残ります。法定相続分は原則的な取り分の割合を示し、遺留分はそれ以下にならないよう保護するものです。
配偶者は法定相続分・遺留分のどちらでも強く保護されていて、他の相続人よりも優遇されるケースが多いです。
法定遺留分とは何かと遺留分と法定相続分の違い
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法定相続分…相続財産をどのような割合で分けるか決める原則の割合
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遺留分…法律上保証された最低限の取り分
内容 | 法定相続分 | 遺留分 |
---|---|---|
対象 | 原則、全ての相続人 | 配偶者・子・親(兄弟姉妹は除外) |
割合 | 親族構成に応じて民法で定められる | 法定相続分の1/2(兄弟姉妹なし) |
主な違い | 分け方の基準 | 最低保障 |
この違いを理解しておくことで、遺言や生前対策についての誤解やトラブルを防止できます。
相続割合の実務的シミュレーションツール紹介
実際の相続割合の算出には、シミュレーションツールを利用すると大変便利です。インターネット上には、家族構成や相続財産額を入力するだけで、各相続人の具体的な取り分や相続税の目安まで自動で計算してくれる無料サービスがあります。
利用の際は、
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正確な家族構成(配偶者、子供、親、兄弟姉妹など)
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放棄や養子縁組等の有無
をきちんと反映させることで、将来の財産分割プランや税金申告の準備に役立てることができます。
簡易なシミュレーションだけでなく、より複雑なケースは専門家に相談することで安心して相続手続きを進められます。
法定相続人の調査方法と相続関係説明図の活用法
被相続人の戸籍謄本取り寄せ手順とポイント
法定相続人を正確に把握するためには、被相続人の戸籍謄本を最初に入手することが重要です。戸籍謄本は、出生から死亡までの連続したものをすべて収集する必要があります。戸籍の取得先は本籍地の市区町村役場で、郵送請求も可能です。ただし、改製などで除籍となっている場合や、複数の自治体にまたがることがあるため、事前に役場に確認しておくとスムーズです。
取得の流れ:
- 亡くなった方の現在の戸籍謄本を取得
- 本籍地が変更されている場合は、さかのぼって各自治体で戸籍を請求
- 続柄を確認しながら、被相続人の出生から死亡までの戸籍を揃える
- 相続人となる兄弟や子、孫の情報も見落とさず確認
チェックポイント
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戸籍の不備があると手続きが遅れるため、収集後に漏れやミスがないか再確認
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謄本の内容が複雑な場合は、法務局や専門家に相談すると安心
法定相続情報一覧図(相続関係説明図)の作り方
法定相続情報一覧図とは、戸籍情報をもとに法定相続人の範囲や関係性を図式化した資料です。被相続人の相続関係を一目で把握できるため、相続手続きや銀行・保険会社への提出資料として広く利用されています。
作成手順は以下の通りです:
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戸籍謄本から家族構成・相続人となる方の氏名、生年月日、続柄などを整理
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被相続人を中心に、図で親・子・兄弟姉妹・孫などの関係性を明確に表す
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欄外に相続発生日・本籍地・死亡日を追記
主な利点
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金融機関や法務局など複数の手続きで使い回せる
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相続人の範囲や順位を誤るリスクを低減できる
無料テンプレート・公式書式の活用術
効率的に説明図を作成するためには、法務局が公開している公式書式や、エクセル形式の無料テンプレートの活用が便利です。
活用方法 | ポイント |
---|---|
公式書式 | 全国の法務局HPからダウンロード可能。記載例も充実。 |
エクセルテンプレート | 無料で配布されているものも多く、簡単に編集ができる。 |
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テンプレート利用時は、被相続人や相続人の氏名・続柄・本籍地などを正確に入力
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記載例を参考に記入漏れがないようにする
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完成後はPDF化してオンライン手続きにも対応可能
調査時に注意すべきトラブル事例と対策
相続人調査の過程で、トラブルや疑問が生じることがあります。特に被相続人の離婚歴や養子縁組、非嫡出子の存在など、相続人の範囲に誤りがあると後の手続きに影響します。また、戸籍記載の名前や生年月日が誤っているケースもあるため、注意が必要です。
想定されるトラブル例:
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過去に認知した子がいたが戸籍に記載がない
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養子縁組の事実が最新の戸籍に反映されていない
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配偶者や兄弟の生存・死亡状況が誤解されている
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相続人の一人が海外在住で連絡が取れない
対策リスト
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必ず全戸籍を取得し、親族関係を網羅的にチェックする
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行政への照会や、弁護士・司法書士への確認も有効
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気になる点は早めに専門家へ相談
行方不明の法定相続人がいるケースなど実務的な注意点
相続人の中に連絡が付かない方や、長期間所在不明の方がいる場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」や「失踪宣告」を申し立てる方法があります。
状況例 | 対応策 |
---|---|
相続人と連絡が取れない | 不在者財産管理人の選任を申し立てる |
生死が不明な場合 | 失踪宣告の申立てが可能 |
海外在住で連絡困難 | 国際郵便や大使館経由で連絡、通知 |
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いずれのケースも手続きに時間や費用がかかるため、早期対応が重要です
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戸籍謄本や説明図だけでなく、現状説明書を銀行や関係機関に提出し手続の円滑化を図ることも有効です
典型的だが迷いやすい法定相続人のケーススタディ
子供が亡くなっている場合の代襲相続
被相続人よりも先に子供が亡くなっているケースでは、その子供(孫)が法定相続人となる「代襲相続」が発生します。特に家族構成が複雑な場合や孫が複数いる場合には、相続分の計算方法も重要です。
継承関係 | 法定相続人となる範囲 |
---|---|
子供が健在 | 子供が法定相続人 |
子供が死亡 | 孫が代襲相続人 |
孫も死亡 | ひ孫が引き継ぐ |
この仕組みにより、遺産は血族関係に沿って順次受け継がれます。たとえば長男が既に亡くなっていれば、その子供(孫)が父親の法定相続分を引き継ぎます。代襲相続は相続人の不在や紛争を防ぐ上でも重要な仕組みとなっています。
離婚した配偶者や養子・非嫡出子の扱い
離婚した配偶者は民法上の法定相続人とは認められません。一方で、養子や非嫡出子も原則として法定相続人となり、実子と同等の権利を持ちます。現行法では、非嫡出子も婚内子同様の相続権が認められます。
整理すると、離婚や養子、非嫡出子・婚外子における相続人のポイントは以下の通りです。
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離婚した元配偶者は相続権なし
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養子は実子と同じく法定相続人
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非嫡出子、認知された子も法定相続人
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養子縁組の有無や戸籍が重要
相続権の有無は戸籍や認知の事実によって判断され、財産分割協議でも影響を及ぼします。手続き前に家族関係や戸籍の再確認をおすすめします。
胎児や内縁者の法定相続人としての取り扱い
胎児は、すでに出生したものとみなされ法定相続人となります(民法)。ただし、その後死産であった場合は権利がなかったものとして扱われます。一方、内縁者や事実婚のパートナーは、法定相続人にはなりません。長年連れ添ったとしても、法律上の婚姻関係がない限り相続権は発生しません。
人物 | 法定相続人としての取扱い |
---|---|
胎児 | 条件付きで相続人 |
内縁者 | 法定相続人に該当せず |
認知していない胎児 | 相続権なし |
このため、胎児も相続分には含まれますが、内縁者の場合は特別縁故者制度など個別対応が必要となる場合があります。
法定相続人がいない場合の法的対応策
法定相続人が存在しない場合、相続財産は最終的に国庫へ帰属します。ただし、その前に故人と特別な関係にあった方「特別縁故者」への分与や債権者への弁済が優先されます。
主な対応策をまとめます。
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相続権を持つ親族が本当にいないか戸籍調査
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特別縁故者がいる場合は家庭裁判所への申し立て
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借金等があれば債権者へ優先返済
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上記が全て該当しない場合は国庫へ帰属
このようなケースでは、遺言書の作成や事前の法的準備が極めて重要です。誰が遺産を引き継ぐかあらかじめ決めておくことで、将来のトラブルや不透明な資産移転を防ぐことができます。
相続放棄の基礎知識と法定相続人への影響
相続放棄とは何か―申述方法と期限
相続放棄は、相続人が遺産を受け取らない意思を家庭裁判所に公式に申し立てる手続きです。相続放棄を希望する場合、被相続人が死亡した事実と自分が相続人であることを知った日から3か月以内に申述しなければなりません。この期間を「熟慮期間」と呼び、期限を過ぎると遺産の一切を承継したものとみなされるため、注意が必要です。
申述方法としては、家庭裁判所に「相続放棄申述書」ならびに必要書類(戸籍謄本等)を提出します。放棄が認められると、その相続人は最初から相続人でなかったものと扱われ、相続権や相続財産への請求権が消失します。放棄の手続きを正しく行うことで、借金などマイナスの財産を相続せずに済むメリットもあります。
なお、相続放棄の申述ができるのは、法定相続人に限られます。申述後に撤回することは原則できませんので、手続き前に十分な確認と判断が必要です。
法定相続人が相続放棄した場合の順位変更
相続放棄が発生すると、その人は法律上はじめから相続人でなかったと判断されます。このため、次に順位の高い法定相続人へと相続権が移行し、財産分割の対象者が変更されます。順位の仕組みを明確に理解することが重要です。
下記のテーブルは主なケース別・相続人順位の例です。
死亡時の家族構成 | 第一順位 | 次に権利が移る者 |
---|---|---|
配偶者・子どもがいる場合 | 配偶者・子ども | - |
子ども全員が放棄した場合 | 配偶者 | 直系尊属(例:父母) |
配偶者・直系尊属も放棄した場合 | 配偶者 | 兄弟姉妹 |
相続人全員が放棄した場合 | - | 特別縁故者、国 |
例えば、子供が全員相続放棄したときは父母など直系尊属に相続権が生じ、直系尊属もいない場合は兄弟姉妹へと遷移します。兄弟姉妹もいない場合、最終的には遺産は国庫に帰属する流れとなります。放棄による順位変更は各家庭で異なるため、相続関係説明図や法定相続情報一覧図を使って整理することが確実です。
認められない相続放棄や手続きの注意点
相続放棄には認められないケースや注意点があります。下記の事項をしっかり理解することが重要です。
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財産の全部または一部をすでに使ってしまった場合
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熟慮期間(3か月)を過ぎてから申述した場合
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法定相続人でない人が申述した場合
相続財産の一部でも使用や処分をした後の放棄は、家庭裁判所に認められない事例が多いです。また、相続放棄は撤回できず、他の相続人や受取人に影響を及ぼすため、事前に遺産の調査や家族間で相談することが大切です。
相続放棄に必要な書類例は下記のとおりです。
書類名称 | 主な取得先 |
---|---|
相続放棄申述書 | 家庭裁判所 |
戸籍謄本 | 本籍地の役所 |
被相続人の住民票の除票 | 市区町村役場 |
相続放棄手続きは情報の整理と期限管理が重要なポイントとなります。手続き前には、信頼できる専門家に相談することもおすすめです。
相続税と法定相続人【課税基準・計算例】
相続税の発生条件と法定相続人別影響
相続税は、被相続人が亡くなった時点で相続財産が発生し、それを引き継ぐ法定相続人や遺言で指定された相続人に課せられます。相続税が発生するのは、相続財産の総額が「基礎控除額」を超える場合です。基礎控除額は、【3,000万円+600万円×法定相続人の数】で計算されます。例えば、法定相続人が2人の場合は、3,000万円+600万円×2=4,200万円が非課税枠となります。相続人の範囲や順位によってこの控除額が変動するため、相続財産の価値や相続人の人数ごとに課税対象が異なる点に注意が必要です。
法定相続人の人数による控除額の違い
法定相続人の人数が増えるほど、相続税の基礎控除額も増えるのが特徴です。控除額の違いを下記テーブルでご覧ください。
法定相続人の人数 | 基礎控除額(万円) |
---|---|
1人 | 3,600 |
2人 | 4,200 |
3人 | 4,800 |
4人 | 5,400 |
法定相続人が誰まで含まれるかは「配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹」と民法で定められます。相続放棄された場合でも、放棄した人も基礎控除額の計算では人数に含めて計算します。独身の方で子供や両親がいない場合、兄弟姉妹が法定相続人となるケースも存在します。
死亡保険金の取り扱いと相続人の関係
死亡保険金は原則として受取人が指定されていれば、その人の固有の財産とされます。しかし、一定額までは「みなし相続財産」とし、相続税の計算対象です。非課税枠は【500万円×法定相続人の数】となっており、例えば相続人3人なら1,500万円までが非課税になります。
法定相続人の人数 | 死亡保険金 非課税枠(万円) |
---|---|
1人 | 500 |
2人 | 1,000 |
3人 | 1,500 |
4人 | 2,000 |
この非課税枠は、受取人が法定相続人である場合に適用されます。例えば、孫や兄弟でも法定相続人であれば該当しますが、法定相続人以外は適用されません。保険金の受け取り方ひとつで相続税の負担が大きく異なるため、事前の確認と家族での協議が重要です。
よくある質問(Q&A)と信頼性向上の情報源紹介
法定相続人とは誰ですか?
法定相続人は、民法で定められた遺産を相続する権利がある人のことを指します。主な対象は配偶者、子供、直系尊属、兄弟姉妹です。一般的には配偶者は常に法定相続人となり、子や直系尊属、兄弟姉妹は順位に応じて決まります。複雑なケースの場合でも、戸籍謄本などで相続人の範囲を正しく確認することが重要です。養子や認知済みの子、胎児も含まれることがあります。
兄弟姉妹や甥・姪、いとこは法定相続人?
法定相続人となる兄弟姉妹は、被相続人に子や直系尊属がいない場合に限られます。甥や姪は、「代襲相続」が発生した場合(たとえば兄弟姉妹が既に亡くなっている場合)に限り法定相続人になります。いとこは民法上、法定相続人には含まれませんので注意が必要です。
続柄 | 基本的な法定相続人か | 代襲相続で該当するか |
---|---|---|
配偶者 | 〇 | – |
子 | 〇 | 代襲あり |
孫 | 原則×/代襲〇 | 〇(子が死亡時) |
兄弟姉妹 | 一部のみ | – |
甥・姪 | ×/代襲〇 | 〇(兄弟姉妹が死亡時) |
いとこ | × | × |
法定相続人がいない場合はどうなる?
法定相続人が誰もいない場合、遺産は最終的に国庫へ帰属します。その前に、特別縁故者(生前に被相続人の世話をしていた人など)が家庭裁判所に申立てを行うことで、一部の財産を取得できる制度もありますが、最も確実なのは生前に遺言書を作成することです。法定相続人の確認が取れない場合は、専門家(弁護士や税理士)へ早めに相談するのが安心です。
離婚や養子の相続権はどうなる?
離婚した配偶者は相続権を失いますが、子供は双方からの相続権をそのまま保持します。また、法的に養子縁組された子供は実子と同等の相続権があります。再婚相手の連れ子は、養子縁組をしていなければ相続権は発生しません。家族構成が複雑な場合は本籍や戸籍の内容に注意し、事前にしっかり確認しておきましょう。
相続放棄した場合の影響とは?
相続放棄とは、相続開始後に家庭裁判所の手続きを経て法定相続人の権利・義務をすべて放棄することです。相続放棄をすると、最初から相続人でなかったものとみなされ、他の相続人や次順位の人が新たに相続人となります。たとえば兄弟姉妹や甥姪などが次の順位に繰り上がるケースも発生します。放棄手続きには期限があるため、迷ったら早めの相談と書類確認が重要です。
信頼できる情報源と公的データの活用について
法定相続人や相続に関する情報は、民法や法務省、国税庁の公式サイトが根拠となります。具体的な判断が必要な場合は、税理士や弁護士、司法書士のサポートも有効です。戸籍謄本や相続関係説明図など公的書類の確認も必須となり、ご自身の状況に合わせて信頼できる情報源を活用しましょう。相続が発生したら必ず複数の情報を照合し、最新の法令や制度改正にも注意が必要です。